2017.07.10生活習慣

<睡眠のヒント>夕方以降はカフェインを控える


夜、アメリカ暮らしが長い友人と久しぶりにホテルのレストランで食事をした時に、食後の飲み物を聞かれて、友人は「デカフェ」を注文していた。ご存じの通り、カフェインレスのコーヒー。日本で暮らしていると、日常、あまりデカフェを意識することはないので、「へー」と思わされた。デカフェを選んだ理由は、「今日は普通に寝るつもりだからね」。

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欧米では、デカフェは日常の選択肢になっているようだが、日本ではあまり人気がない。大手コーヒーチェーン店のホームページを見ると、カフェインレスコーヒーは「病院内店舗と一部店舗のみ」で扱っているとある。限られたニーズに対応するというポジションのようだ。

カフェインの作用は4時間以上続く

コーヒーを飲んで、頭をすっきりさせて仕事に向かう人は多い。カフェインの覚醒作用は、飲んでから30分ぐらいで効き始め、4時間から長いと8時間も残ることがあるという。日大精神科の内山真教授(睡眠学)によると、起きて活動していると脳内には、プロスタグランジンD2という睡眠物質がたまって眠たくなる。カフェインは、眠気を引き起こす脳の視床下部にこの物質が伝わるのを妨げるという。

夜、気持ちよく眠るには、夕方以降は、カフェインを控えた方がいい。よい眠りのための基本中の基本。ところが働き盛りのサラリーマンから高齢者まで、眠りのために夜のカフェインを控えるという習慣を持たない人が少なくない。食後にゆっくりと紅茶を飲むのが楽しみという女性。夜眠れないからと睡眠薬に頼る。夕食後に緑茶を何杯も飲んで、「寝付けないから」と睡眠薬を飲む高齢者の話もよく聞く。79歳になる私の母親もそうだった。

カフェインはコーヒーや紅茶、緑茶、ウーロン茶のほか、コーラやチョコレート、一部の栄養ドリンクにも入っている。お茶の中でも、玉露は、コーヒーよりも多くカフェインを含んでいる。

企業の健康活動でノンカフェイン飲料普及

「夜の眠りのためにカフェインを控えるなんて常識でしょ」という人もいるだろう。どうも睡眠についての基本的なルールというのは、知っている人は知っているけれど、知らない人は知らないという印象がある。睡眠指導に詳しい北里大の田中克俊教授(産業精神保健学)は、「アメリカでは睡眠についての基礎知識を学校教育でも提供しています。それが日本では不十分です」と指摘する。

田中教授が産業医としてかかわる大手精密機械メーカーのキヤノンでは、睡眠に問題を抱えているという社員約100人を集めて、睡眠の基礎知識を紹介する1時間の講習や個別指導を開いた。指導後に生活に取り入れた生活習慣を質問すると、半数が「夕方以降のカフェイン制限」を上げていた。睡眠に問題があると自覚しつつ、多くの人が夜間にカフェイン飲料を飲んでいたわけである。

創業80年を超えるキヤノンは、医師である創業者が「健康第一主義」を掲げたこともあり、健康施策に熱心だ。同社の健康支援室が音頭をとって、昨年度から睡眠をテーマに全社でキャンペーンを展開している。睡眠についての基礎知識をリーフレットで紹介するほか、睡眠の講習会や睡眠計で測ったデータを基にした個別指導もある。社内の売店では、「午後3時以降はノンカフェインがおススメ!」と表示して、ノンカフェインコーナーを設けている。

30分でカフェインは効き始める

カフェインは覚醒作用のある薬物なので、その特徴をうまく利用をすることもできる。睡眠のリズムが崩れてしまいがちな夜勤をどうしのぐのか。国立精神・神経医療研究センター精神生理研究部の三島和夫部長は、著書「朝型勤務がダメな理由 あなたの睡眠を改善する最新知識」の中で、対処法のひとつとして夜勤中の30分の仮眠を勧めている。その際、仮眠の前にコーヒーを飲むのがひと工夫。カフェインが効いてくるまで30分かかるので、目覚めると覚醒しやすい。

カフェインの作用は、個人差もあり、その日の体調にも影響されるだろう。その特性を理解して楽しみ、活用したいものだ。かく言う私も、長年、昼夜かまわずコーヒーを飲んできたひとり。それでも午後11時を過ぎると眠たくなるので、カフェインの害は気にしていなかった。

睡眠をめぐる取材を進める中で、試しに夕方以降のカフェインをやめてみると、ぐっすり感が違ってきたような感じがする。夕方以降のコーヒーをやめて5か月が過ぎた。そして気づいた。コーヒーを必需品と思っていたが、飲むのをやめるわけではないので、意外と苦痛なく生活習慣は変わった。朝、昼はコーヒー。夜はいろいろな麦茶を楽しんでいる。うちの母親も夜は緑茶をやめ、代わりにハト麦茶やハーブティーなど、あれこれ試している。睡眠薬はいらなくなった。

眠りが気になるあなたも、気になっていないあなたも、試しに夕方以降のカフェイン飲料を控えてみてはいかがでしょう。今までとは違う夜の飲み物の楽しみが広がるかもしれません。

(読売新聞医療ネットワーク事務局専門委員 渡辺勝敏)

記事提供:ヨミドクター(読売新聞)

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